2020.02.01
ダブルバインドとは、二重拘束という意味を持つ言葉です。本来は心理学で使われる言葉で、矛盾した意味のメッセージを相手に伝えるというもの。それによって相手は、どちらのメッセージ通りに行動したらいいのか困り、混乱した状態に陥るのです。
困ってしまうだけではなく、矛盾した命令をされることにより相手は強いストレスを感じることになります。一体どちらの命令に従えば正解なのかわからなくなり、「正解しなければ」と相手の顔色を伺うようになるのです。
それにより、コミュニケーションがうまく取れなくなったり、酷くなると心の病気を患ってしまうこともあります。
ダブルバインドとは親子間などで起こりやすいとされています。しかし、実は社会に出た後、職場でも起こりやすいのです。
例えば、仕事でミスをした時「なんでこんな仕事もできないんだ!もう何もせずにデスクで座っていろ!」と上司に怒られたとします。しかし、上司に言われた通りにしていたら、今度は「どうして仕事をしていないんだ!」と言われた場合、これはダブルバインドになります。
最初は何もしなくていいと言われたのに、次にはなぜ何もしていないのかと怒られているからです。
このような矛盾したメッセージであるダブルバインドとは、時としてパワハラ、モラハラに当たることも。そして、エスカレートすればダブルバインドを受けた方の人の心に傷を負わせ、トラウマや心の傷となってしまうこともあるのです。
親子関係でよく見られるダブルバインド。親はダブルバインドを行なっている気がなくても、子供にとってはダブルバインドになってしまっている場合もあるのが、厄介なところです。
では、親子関係におけるダブルバインドとは、具体的にどんなものが挙げられるのでしょうか。なかなか気づきにくい、親子間のダブルバインドにおける具体例について、紹介していきます。
小さな子供相手だと、どうしても子供がわがままを言ったり、周りに迷惑をかけそうな行動をとったりした場合に、しつけを行わなくてはならないときがあります。しかし、そのようなしつけの場面で、無意識のうちにダブルバインドを行いがちです。
例えばおもちゃ売り場で子供がおもちゃが欲しいと駄々をこねたときに、「うるさい!静かにしないともうここに置いていく!」と言ったとします。しかし、親にとってはその場限りの方便のため、「本当は置いていかずに連れて帰る」というダブルバインドが発生するのです。
また、子供が成長してからの親子関係でもダブルバインドが発生する場合があります。主に発生する成長後のダブルバインドとは、進路関係のものが多いです。例として多くの場合、親は子供に進路を決めさせる時「自分の行きたい道を選びなさい」と言います。
しかし、いざ子供が自分の行きたい学校を選び、親に提示したところ、「ここは遠くて一人暮らしをさせなくちゃならないけど、仕送りのお金がないから違うところにしなさい」等、理由をつけて否定することがあるのです。
このような場合もダブルバインドにあてはまり、子供は結局のところ自分の行きたい道を選べない、と悩むことになります。
親子間におけるダブルバインドとは、発生してしまう理由に様々なものがあり、場合によっては仕方のないものもあります。しかし、ダブルバインドが行われすぎると子供はだんだんと親の顔色を伺うようになり、自分の意見を自由に言うことができなくなってしまう可能性があるのです。
親子関係におけるダブルバインドにはいくつか対処法があります。どのようなものがあるのか、ひとつずつ見ていきましょう。
親子関係によるダブルバインドが起こるか、起こらないかについては、普段からうまくコミュニケーションが取れているか否かが重要な問題となってきます。
何故なら親子間でのダブルバインドは普段のコミュニケーションにおいて、親から優しさを受け取れていると子供が認識できていれば、起こることは少ないからです。
意思疎通とは、うまくできていないと相手の真意に気づかないもの。言葉をストレートに受け取ってしまい、ダブルバインドを起こしがちです。そのひとときだけではなく、毎日のコミュニケーションをうまく取ることを心がけていきましょう。
ダブルバインドが起こってしまい、親子関係がうまくいかない場合は、
家庭内だけで解決するのではなく他の立場にいる大人にも意見を求めてみることがおすすめ。学校のカウンセラーなどフラットな立場でアドバイスをくれるような大人を、相談相手として見つけることが大事です。
バイト先の先輩など自分の家族のことを知らず、客観的な立場で意見をくれる人に相談すれば、家族間では思いつかなかった解決への糸口が見つかることもあります。
自分の行きたい道に進みなさい、と言っていても親にも親の立場から見た、子供に望む形があるもの。成長するとなんとなく親が自分に何を求めているのか、気づいてしまうこともあります。
しかし、親の期待に答えながら自分のやりたいことも完璧にこなすというのは、なかなか難しいもの。自分が絶対に進みたい道があるならば、まずは努力をし、その努力の姿勢を親に見せることが大切。子供の本気を認めることができれば、親も納得して進みたい道を認めてくれるものです。
大人になってから現れやすいダブルバインドは、職場環境におけるものが多いです。多くの職場では上司や先輩、後輩というそれぞれの立場と関係性があります。その中でダブルバインドが見られやすいのは、上司との関係性によるものです。
例えば、営業でうまく契約が取れなかったとき、上司から「なぜこんな契約も取れないのか、もうお前は営業をせず、オフィスで待機していろ」と言われたとします。しかし、言われたとおりに待機していたら、今度は「営業なのになぜ動かないんだ、外回りに行け」と言われるのです。
このように矛盾した支持をされるダブルバインドとは、パワハラなどの原因になることもあり、当人にとっては大きなストレスとなります。
上司の側はパワハラだと思っていないことも多いため改善されにくく、結果としてダブルバインドが原因で心を病んだり、退職してしまうという結果に陥ってしまうこともあるのです。
職場でダブルバインドが起こった場合、なんとか回避したいものですが、ダブルバインドを起こしている人に注意してもなかなか改善されないなど、なかなか難しいもの。そのうえすぐに会社を辞めたりすることはできないため、他の対処法を考えることが重要になってきます。
職場環境におけるダブルバインドの対処法とはどんなものがあるのか、代表的な3つのものを紹介していきます。
上司がダブルバインドをしている場合、自分だけではなく他にも同じような思いをしている人がいるはず。自分がダブルバインドをしていることに気づいていない人は、誰かひとりに対して行うのではなく、他の同じような部下に対してもダブルバインドを行っていることが多いのです。
そのような場合、上司からのダブルバインドをうまく対処している人が周りにいるもの。周囲をよく観察してみて上手に対処している人を見つけて、その人のやり方を真似するとダブルバインドをうまく受け流せるようになります。
会社には沢山の人がいて、そして上司もほとんどの場合一人ではないもの。まずは、ダブルバインドをしてくる上司のことをうまくかわしながら、仕事を進めていき成果を得て行きましょう。
自分の目標を決め、それに向かって努力していけばその過程で、別のダブルバインドを行わない上司や会社の組織そのものから評価を得ることができる可能性も。
他の場所で認められているという成果を得ることができれば、ダブルバインドもやがて気にならなくなり、さらに評価を得たことでダブルバインドを受ける隙もなくなっていくのです。
職場関係は親子関係とは違い、切っても切れない間柄、というわけではありません。どうしてもダブルバインドが辛いという時は環境を変えるというのも重要な対処法です。
ダブルバインドに耐え続け、結果心を病んでしまうようなことになる前に、退職し別の職場を探すというのも一つの手。
「職場を変えるなんて、逃げでは?」と思うかもしれませんが、逃げることも大切な選択肢です。
自分の心と向き合って、もう限界だと思ったら転職も視野に入れていきましょう。
ダブルバインドは時に恋愛テクニックの一つとして用いられることもあります。ひとつは肯定的ダブルバインドと言い、二つの選択肢を出してどちらかを選ばせるというものです。
例えば、連絡先を教えてほしいけどもストレートに言ってしまったら断られてしまいそう、というとき、「LINEとメール、どちらか教えてほしいんですが、どちらの方が使いやすいですか?」など、AかBどちらかを選ばせるような聞き方をするのです。
このような聞き方をすると、どちらかを選ぶような答えになり、「教えない」という選択肢が無くなります。
また、否定的ダブルバインドと呼ばれるテクニックもあり、これは優しさと厳しさを交互に出して相手を混乱させ、判断を鈍らせます。言葉で罵倒したかと思ったらすぐ抱き寄せて頭を撫でるなど、洗脳に近いテクニックのため、こちらのテクニックを使う彼氏や彼女が居たらすぐに離れることが大切です。
ダブルバインドとは、時として洗脳的な側面も持つもの。ダブルバインドによって洗脳されてしまうと、自分ではこれが合っているのか間違っているのか正常な判断が出来なくなってしまい、相手に支配されてしまうこともあります。
相手が知らないうちにダブルバインドを行っているという場合は、指摘することによって直ることもありますが、意識的に行っている場合は直らないどころか受けている側の心を壊してしまうこともあるもの。
ダブルバインドを受けていると思ったら早めに危険な状況下にいるということに気づき、適切な行動を取ることが大切。自分の心を守れるのは自分だけなのです。
※この記事は、悩んでいる方に寄り添いたいという想いや、筆者の体験に基づいた内容で、法的な正確さを保証するものではありません。サイトの情報に基づいて行動する場合は、カウンセラー・医師等とご相談の上、ご自身の判断・責任で行うようにしましょう。
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