2019.12.13
最高なものは、永遠を感じさせてくれるものだと信じてた。
でも、最高だと思っていた男は、一瞬で消えた。
今まで、信じていたこと全て、偽りだと知った時、心に大きな傷だけ残して、癒える前に塩を塗りこまれた。
恋は簡単に「嘘」と「裏切り」を教えてくれる。知らなくてよかったのに。
でも、最高な恋だった。
何度後悔したって遅い。何度悔やんだって遅い。もう全部全部、終わってしまったんだから。
あの時、こうしていれば。あの時、あんなこと言わなければ。あの時、あの言葉を言えていたら。
そんなたらればを並べたって、目の前の現実は一ミリも変わってくれなかった。
それでいいんだ。それが正しいんだ。
喪失感に見舞われながら、歩いた繁華街。夜の都会は、今日も眠る時間を教えてくれなかった。
すれ違いざま、私を惹きつけるように香ったあの匂いは…。
今でも、鼻にこびり付いて離れない香水の香り。彼かもしれない。そんなこと思いながら、振り返ることすら怖くてできなかった。
「もし彼じゃなかったら」そう思ったら、自分の行動が情けない気がしてしまうから。
タバコの匂いが染み付いたソファー。他の女の香水の匂いがするジャケット。
飲み会帰りのお酒の匂い漂う唇。抜け殻のように脱ぎ捨てられたパンツ。炭酸が抜けきった缶ビール。
人間って、なんでこんなにも強欲なのだろうか。
なんでこんなにも、欲望に忠実に生きられないのだろうか。
本当は好きな人と仕事をして、好きな人を抱いて、好きな人と生きていた方が楽しいのに…。
それが簡単にできるほど、世の中は甘くないらしい。
そんなことを思いながら咥えたタバコは、人生の苦みを象徴するような不味さだった。
好きな人にしか見せない笑顔。好きな人にしか見せない色っぽい顔。好きな人にしか見せない快楽に溺れた顔。
この恋には、終わりが来るらしい。針が右回りをやめない。刻一刻と過ぎていく時間の中で、私の心臓は止まったままだった。
鼓動が早くなる感覚は、いつから味わっていないのだろう。
本当は、ただ好きな人に「好きだ」と言える人生を送りたかったのに。
それすら叶わない世知辛い世の中に、私は何を求めているんだろう。
好きな人に遊ばれる毎日。
呼びたい時だけ呼ばれ、「会いたかった」も「好きだ」も「愛してる」も聞いたことないのに、何を期待して、この関係を続けているのだろう。
毎回「今日が最後」。そう決めて、彼に会いに行く。
彼女がいるのかも聞けない。合鍵も持ってない。女物の化粧水とメイク落としが気になる。今日はどこで何してるんだろう。
全部全部、聞いたら壊れることを知ってるから。
こんな人生、楽しくもないのに…望んでいた人生じゃないのに…。
もう涙すら出てこないや。自分に呆れて、男に呆れて、酒に呆れて、タバコに呆れて。もう、涙を流すことすら勿体無いや。
柄にもなく、手紙でも書いてみようかと思った。
そんなアナログな行動に、彼は呆れながら笑ってくれるんじゃないかと思ったから。
でも、そんなはずないか。
今私が目の前に現れても、涼しい顔して「久しぶり」って言うだけ。それだけの関係。たったそれだけ。
私がいなくなったことに、彼は気づいているんだろうか。それすら気にしてなかったら…。
私がこの世に存在して、この世に生きている意味すら分からなくなってしまう。
お願いだから、あと一回だけ、最後に一度だけ…。
お願い。最後に一度だけ。私の唇に、温かくて優しいキスを落として?
人に話せない悩みも、今まで居場所がないと悩んでいたことも全て、ここでなら話せる。自分が一歩を踏み出せば、世界が変わる。今辛い自分は、明日には笑えるかな?そんなあなたへ。待ってるね。
次に読みたい記事は?
人気の記事
Ayano
隠されたメッセージ。