2019.01.24

あの冬の日の思い出

Ayano

Ayano

あのとき付き合っていた彼が好きだった。雪が降る季節に分かれた私は、彼の半袖姿を知らない。

あの冬の日

あの冬の日の思い出は、忘れることができない。

全てを雪のせいにするのは勿体無い。

全てを冬のせいにするのは勿体無い。

寒いあの冬の日は、マフラーが欠かせなかった。

でも、手袋は、貴方の手の体温を感じられないから着けたくなかった。

好きな人には、誰より私を好きでいて欲しかった。

だから、なんでもしたわ。

本当の自分を忘れてしまうくらい、貴方の色に染まった。

降る雪が血の色に染まるように、綺麗に私は貴方色に染まったみたい。

まだ、貴方が触れた唇が暖かい。

貴方が触れた私の腕は、じんとして暖かい。

ふと財布を取り出すためにバッグに手を入れた。

貴方が私に預けたシルバーのブレスレットが出てきた。

ふわっと貴方の香水の香りが鼻に届いた気がした。

ずっとずっと近くで香っていたかった。

行かないで。

行かないで。

行かないで。

私をおいて、一人で遠くへ行かないで。

それでもよかったんだ。

雪のように優しく降ってくれない。

でも雪のように簡単に溶けていく。

そんな彼氏だった。

私は「誰かの代わり」だなんてわかってた。

でも、それでもよかったんだ。

ベッドに誘導するのがうまい貴方。

ブラジャーのホックを外すのがうまい貴方。

レストランをたくさん知っている貴方。

女の子のエスコートがうまい貴方。

女の子をよく理解していて怒らせない貴方。

いつも投げてくれる言葉一つ一つが美しい貴方。

どんなに寒い冬でも、夏の匂いがした貴方。

長いコートが似合う貴方。

まつ毛が長くて、鼻が高くて綺麗な顔なのに笑うときに恥ずかしがる貴方。

困ったときに鼻を擦る癖がある貴方。

貴方の部屋にあったメイク落としシートは誰のもの?

ホットアイマスクは誰が忘れていったの?

女の子みたいなシャンプーを使っているんだね。

でも、いいよ。

聞かないでいてあげる。

貴方の過去には、触れないでいてあげる。

その方が、心地良いんでしょう?

「そばにいて」

貴方が仕事に向かおうとする背中を布団にくるまりながら見ていた。

「そばにいて」

「今日だけは、隣にいて」

そう言いたくて、言いたくて、言いたくて、仕方なかった。

でも、いつも通り言えなかった。

貴方の声が遠くなっていく。

「いってきます」の声が小さく聞こえた。

「いってらっしゃい」と言ってあげられなかった。

ベランダに出てタバコを咥えた。

下を見たら仕事に向かう彼の背中がまた見えた。

携帯をいじっていて、ベランダに一切目を向けない彼。

それでもいいよ。

私はずっとずっと、追いかけるだけでいいよ。

貴方からの見返りなんて求めないよ。

でも今日は一段と冷えるね。

シルバーのブレスレットは手が冷えるから置いていけばいいのに。

ワインレッドのマフラーは貴方をより格好良く見せるのね。

他の女に触れられたら泣いてしまいそう。

貴方の周りにいる女の子たちは、私にとってお姉さん過ぎて怖かった。

「妹みたいな彼女だ」なんて冗談でも言わないでほしかったわ。

貴方なんて、雪より早く溶けてしまえばいいのに。

お願いだから、早く暖かい季節になって彼を溶かしてよ。

Ayano
Ayano
株式会社DariaMe代表|22歳 バイセクシャル 『生きるという当たり前に真剣に向き合います』

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