2018.10.10
春先に出会った人。
何故かしら、彼との初対面は、今でも鮮明に記憶している。
少しだけかけられた言葉。
あまり話をしてくれなかったこと。
何故か遠目で彼を見ていたこと。
春のふわりとした空気の中、彼を初めて見た。
秋、その人に恋をした。
1つ年上の彼が描こうとしていた未来に、憧れた。
彼が見ている視線の先を覗いてみたくなった。
ただただ、彼のことが知りたくなった。
彼の纏うすべてが光って見えた。
彼の言葉が、声が、表情が、
少し肌寒さを感じるようになった心に沁み渡った。
冬になって叶ったその恋は、長く続いた。
同じ季節を何度も何度も、共に過ごした。
二人だけの記憶がたくさん積み重なっていった。
それでも。
季節を何度繰り返しても、私にとって、秋は恋の始まり。
翌年からの秋は、いつもよりあたたかい気がした。
夜の長電話で少し冷えることが嬉しかった。
季節にはイロや香りがある。
四季を感じることは、恋のイロと香りを確かめること。
秋は、恋の始まりの季節。
あたたかく、強く、心をぎゅっと掴まれるような感覚。
少し冷たい風を避けるふりして、マフラーで赤い顔を隠す。
真っ赤な紅葉は、私の心と顔のイロ。
今年の秋は、まだ暑い。
あのイロも、香りも、景色さえも、やって来ない。
あの胸の高ぶりと共に、どこかに置いてきたのかしら。
人に話せない悩みも、今まで居場所がないと悩んでいたことも全て、ここでなら話せる。自分が一歩を踏み出せば、世界が変わる。今辛い自分は、明日には笑えるかな?そんなあなたへ。待ってるね。
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私にとって、恋の始まりは、いつまで経っても秋。